さんしゅみ

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【能登半島地震】各携帯キャリアの通信復旧対応の状況を簡単にまとめてみた

各携帯キャリア公式サイトより
2024年1月8日時点復旧エリア(左上よりdocomo/KDDI/Softbank/楽天モバイル)

2024年1月1日に発生した「令和6年能登半島地震」

16時10分発生の地震ではマグニチュード7.6を記録し、最大震度7を石川県羽咋郡志賀町で観測しています。未だ被害の全貌が見えてきていませんが、道路・電気・水道・通信といったインフラについても多大な被害があり、かつ半島地域が主な被災地という特異な震災となりました。

携帯キャリア各社においても停電や設備の被害による通信障害が発生。各社復旧に向けて通信支援、電源支援を行っておりますが今回は地形や各社が持つ支援方法に特色が出ているように見えたので簡単にまとめてみたいと思い、簡単にまとめてみました。通信業界の片隅にいる一人の人間のなんとなくの想像も含まれますので暇つぶし半分、災害対策としての参考半分で読んでいただければ幸いです。

被災地域の方は各キャリア公式サイトより最新情報をご確認ください。

地震発生直後の各社の通信状況

各社とも発災と同時に石川県・富山県・新潟県などで携帯電話の通信障害が発生。富山県、新潟県の障害は各社順次復旧しましたが、石川県能登地方については被害が大きく、既存設備の活用のみでは復旧にいたらず、各社が対応に走ることになりました。

X(旧:Twitter)ではdocomo、KDDIについては発災直後は通信が行えたエリアも多いようですが、次第に基地局に搭載されているバッテリー切れ、発電機の燃料切れ等で障害となった基地局もあったようです。

Softbankについては発災直後から通信障害となった基地局もあるとの投稿も見られましたが、Softbank=有事の際に弱いというイメージ先行の投稿もあるかと思うので、各社とも実情はあまり変わらないと思われます。

楽天モバイルについては能登半島でのカバーエリアが他3キャリアに比べてそもそも少なく、平時でも各役場エリアを中心にカバーしている程度で山間部等ではもとよりエリア範囲外でした。

想像の域は出ませんが、各キャリアの基地局はバッテリーや発電機等のバックアップ電力を備えているため、発災直後の障害については各所で地割れや土砂崩れといった地上経路での被災に基地局自体や伝送路が巻き込まれての障害が多いのではないかと考えられます。

www.itmedia.co.jp

以下より各キャリアの支援状況を列挙していきます。

全ての支援措置を記載することは時間的に随時更新されていくため、主要情報は総務省の被害状況レポートより記載し、今回の地震ならではの特色ある支援内容を追加でまとめます。(1月8日10時現在)

www.soumu.go.jp

各社リエゾン(連絡員)派遣状況

・NTT西日本 石川県

・docomo 石川県

・KDDI 石川県、七尾市役所、輪島市役所、珠洲市役所

・Softbank 石川県

・楽天モバイル 石川県

KDDIのみ七尾、輪島、珠洲の各市役所にもリエゾンを送り込み対応に当たっているようです。他キャリアと比べても災害対応に特に力を入れているイメージはありますが、こういったところでもKDDIのやる気が見て取れます。

電源関連 移動電源車・可搬型発電機

・NTT西日本 19台・6台

・docomo 2台・27台

・KDDI 0台・61台

・Softbank 1台・69台

・楽天モバイル 0台・1台

KDDI、Softbankは可搬型発電機を多数用意し、通信支援と共に道路が寸断されていても小回りが利きやすい電源支援を行っている模様。

基地局関連 車載型基地局・可搬型基地局

・docomo 18台・4台

・KDDI 18台18台

・Softbank 3台・2台

・楽天モバイル 22台・0台

docomo、KDDI、楽天モバイルは車載型基地局を避難所などに多数配備、KDDIについては可搬型基地局も同様に多数配備している。

車載型基地局は車体に各社ロゴが目立つようにラッピングされているため、被災民に分かりやすい支援とも言えます。そういった意味ではSoftbankが損をしているような形ですが、Softbankも別の支援方法(後述)を行っています。

可搬型衛星アンテナ

・docomo 4台

・KDDI 12台

・Softbank 35台

可搬型衛星アンテナについてはSoftbankが力を入れています。

1月8日付でSoftbankから発表されている「通信ネットワークの復旧活動の状況」でも以下のように発表されています。

現地では車両での移動が困難な地域が多いことから、作業員が 1 人でも運搬できる機動性の高い小型機材による復旧が有効と判断し、可搬型衛星アンテナや可搬型発電機などを主に活用しながら復旧作業を行っています。また、可搬型衛星アンテナで衛星通信による暫定的な伝送路を確保することで、既存の基地局が本来カバーしているエリアを早期に回復させる取り組みを進めています。

[PDF]通信ネットワークの復旧活動の状況

通信を復旧されるという観点で言えば数多くの基地局の通信を復活させる事が最も良いですが、そのためには車両や物資等が大量に必要となってきます。今回は地形的なことや道路状況も含め、そういった支援展開は困難を極めているようです。

docomo、KDDIはその点、潤沢に大規模な設備を用意できていますが、Softbankはそういった大規模サポートは任せ、Softbankとしてできるサポートを行っていると考えられます。

こういった取り組みが実を結んでいるのか、この記事冒頭の左下、Softbankのカバーエリアがdocomo・KDDIと比べて能登半島中心部や北部海岸沿いの広範囲にカバーエリアが拡大しているのが確認できます。

船上基地局の運用(docomo・KDDI)

今回初の取り組みとしてdocomoとKDDIが共同で「船上基地局」の運用を1月6日より開始しています。

NTTワールドエンジニアリングマリンの海底ケーブル敷設船「きずな」にdocomoは衛星アンテナを活用した船上基地局、KDDIはStarlinkを活用した船上基地局を搭載して石川県輪島市町野町沿岸にむけた通信支援を行っています。

半島という地形を逆手に取った海上からキャリアの壁を越えた通信支援が行われています。

k-tai.watch.impress.co.jp

ドローン基地局の運用(Softbank)

Softbankも「有線給電のドローン無線中継システム」の運用を石川県輪島市門前町の一部エリアで1月6日より開始しています。

ドローンに給電用の電源ケーブルと通信用の光ファイバーを地上の中継装置に接続し、衛星アンテナ等で通信経路を確保するシステムです。既存基地局以上の高度まで上昇してカバーエリアを広くとることができるドローンの利点と、バッテリー駆動による稼働時間の問題を電源ケーブルという手段でカバーし、4日以上通信エリアを維持できるとのことです。

Softbankは他にも係留気球無線中継システムも保有しているため、今後の活用が期待できます。

k-tai.watch.impress.co.jp

www.softbank.jp

KDDIは石川県と総務省の要請を受け、Starlink Japanと協力して能登半島地震の避難所へ350台のStarlink端末を提供すると発表しています。

KDDIでは自社の車載型、可搬型、船上基地局のバックホールとしてStarlinkを活用し、自衛隊、自治体、電力会社などへもStarlinkの提供も行っており、今回の各避難所への提供と合わせて約700台のStarlinkを支援に活用しているとのこと。

Softbankも自治体への無償提供を発表しています。

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利用者側でできる対策は

今後も各社協力の元通信復旧が進んでいくと思われますが、利用者側で災害、障害等に備える方法で考えられるのは、複数の通信キャリアとあらかじめ契約を結んでおくことかと思われます。

被災した場所でとあるキャリアが利用できたとしても時間経過や避難先では別のキャリアしか利用できなかったり、通信の復旧までの時間はキャリアによって異なるかと思われます。

現在は各キャリアで契約する手段も数多く増え、維持費も下がっています。また、通信支援に合わせて各社被災地利用者に対してデータ通信容量の追加や、追加データ容量の無償化等の取り組みを行っています。

これは大手キャリアのみだけではなく、MVNO各社も少量ながらデータ容量の追加等を行っています。

k-tai.watch.impress.co.jp

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スマホに入れる携帯回線を1回線のみだけではなく、2回線にするだけでも冗長性の観点ではかなり有用かと思われます。

sanshumi.com

被災地域の方は大変な状況が続くでしょうが是非ともこの難局を乗り越えていただきたく、被災地域以外の方はできる支援と自身の災害対策を見直す機会ととらえましょう。

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